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社長の経営日誌

孤高の天才 社長の経営日誌 田宮社長が好き勝手に織りなす独白です
  FILE No.576 2018.6.2  

「 猪木舌出し失神KO事件(3) 」

(前回からの続き)

今年で35周年を迎えた「IWGP」については先週詳しく書きましたが、記念すべき第1回大会の優勝決定戦は1983年の本日、6月2日の事でした。
猪木さんがハルク・ホーガンのアックスボンバーで失神KO、病院送りになった余りにも有名なこの試合関しては6年前(FILE No.276,277 参照)にも書き尽くしており今更くどくど書く事も無いのですが…嘆かわしいのは今や「猪木自作自演説」がすっかり定着?してしまっている事です。

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アックスボンバー炸裂の決定的瞬間を三方向から

その根拠の一つとして挙げられるのが猪木さんが試合の何日か前親しい記者との雑談で、プロレスが朝日、毎日、読売新聞に掲載されるにはどうしたら良いか?と漏らしていた事です。成程、確かに猪木さんが勝ってIWGPに優勝しても一般紙には報道されない、しかし失神して病院送りになれば日本中が注目するし、実際そうなりました。

35年前の6月2日は木曜日でした。

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 動けなくなった猪木、
ホーガンの胸中は!?

ビッグマッチは土日祝開催が常識の今のファンからすれば、えっ、平日?と不思議に思うかもしれませんが、新日本プロレスの場合はテレビのレギュラー枠が金曜夜8時だった事からシリーズ最終戦の大一番が木曜日で、翌日録画放送するパターンが圧倒的に多かったのです。
猪木VSホーガンの試合結果は翌日の午後には東京スポーツに掲載されるし、新聞を買い損ねても夜にはテレビ放送があるのですが、気になってとても眠れやしません。
インターネットやSNSでリアルタイムで情報が伝わる今の時代からすれば隔世の感がありますが、我々昭和のファンはこんな時は東京スポーツの編集部に電話して試合結果を聞いていました。この日も確か夜の10時頃に電話を入れたと思います。
「あのう、今夜のIWGP優勝戦はどうなりましたでしょうか?」

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 “プロレス新聞”
東京スポーツは勿論1面

「IWGPは…猪木が負けました!」
一瞬絶句して声を失った私、「どうして負けたんですか!?」
「ノックアウトです。」
電話ではそれ以上詳しい話は聞けないのでお礼を言って受話器を置きましたが、かえって眠れなくなってしまいましたよ(苦笑)。

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 舌出しが後々疑惑の元に…

翌朝、当時田宮家は確かサンケイ新聞だったと思うのですが(猪木さんの思惑通り?)「猪木失神、入院」の記事が出ていました。

当時の「週刊プレイボーイ」に「ニュース・パロディ」と題した連載コラムがあり、「アントニオ猪木失神事件 3大新聞のプロレス拒否症おじさんたちが本気で“プロレスの味方”になる日」と、この試合を一般紙がどのように報じたのかを詳しく書いた、ユニークな記事が掲載されました。今回35年ぶりに読み返してみましたが、ここに再現してみます。

        ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

猪木、立て!立ってくれ! 蔵前国技館13000人のファンの必死の声援と祈りも空しくアントニオ猪木は遂に立てなかった。のみならず、意識不明のままで救急車で病院に運ばれちまった。プロレスであるまじきことに、マジにKOされてしまったのである。
これはあの不死身の力道山がヤクザの一刺しであっけなくあの世に行ってしまったのに匹敵する大事件ではあるまいか。少なくとも何千万というプロレスファンは、あれ以来のショックを受けた。
ショックは二日越しだった。翌朝の全国紙のうち、朝日と毎日はこの大事件を一行も報道しなかったのだ。彼らは一体、読者の知る権利をどう考えておるのか。

最近は新聞批判が大流行であり、巷の新聞評論家が昔の野球評論家に負けないぐらい氾濫している。巷の野球評論家の間では今では野村克也調が流行りだが、巷の新聞評論家に人気があるのは何といっても渡部昇一調。そのうちの一人が、一般紙の猪木事件の報道ぶりを次のように評論してくれた。
「3日の朝刊でこの事件を報道したのは読売とサンケイだけですが、その書き方が面白い。
読売は“アントニオ猪木さんがプロレスの試合中、相手のハルク・ホーガンさんにリング外に突き落とされて”と両方ともさんづけにしている。
野球の試合で、例えば2塁に入った巨人の篠塚が広島の衣笠のスライディングで一か月の重傷を負ったとして“衣笠さんのスライディングで篠塚さんは”なんて書きますか?

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 病院に運ばれた猪木、診断結果は「一過性脳震盪」

もっとおかしいのがサンケイ。“猪木さんはこの日IWGP杯を賭けてホーガンと対戦、先にリングに上がったホーガンが遅れて上がって来た猪木さんに「首折り技」をかけた…”と、何故か猪木はさんづけ、ホーガンは呼び捨てにしている。
猪木が被害者、ホーガンが加害者というわけですかね。それともこれを書いた記者が個人的に猪木ファンだったのかな? しかしこの2紙は報道しただけまだいい。朝日と毎日は完全に黙殺した。この色分けで何か気が付きませんか? そう、教科書問題の時、比較的早く“侵略 → 進出”の誤報を認めたのがサンケイと読売で、最後まで頬っかむりをしたのが朝日と毎日。読者無視の夜郎自大の体質がこんなところにも出ているわけです。」
なるほど、猪木KO事件と教科書問題を結び付けるところなんかは鮮やかなもので、巷の新聞評論家もなかなか馬鹿にならない。
しかし素人の出番はここまで。何故なら、文芸春秋VS朝日新聞の歴史を背負って、本物の渡部昇一氏が「諸君!」誌上で再び朝日新聞に公開質問を突き付けたのだ!

周知のように、いわゆる3大紙はスポーツ面からプロレスをシャットアウトしている。
「プロレスはショーであって、スポーツにあらず」と言うのがその共通した言い分である。
だが、プロレス報道の歴史を少し遡って見ればこの言い分の偽善性はたちまち暴露される。 力道山の第1次プロレス・ブームの時代には3大紙もプロレスを報道していた。
特に毎日などはプロレス興行を直接後援していた時代がある。
だとすればその頃はプロレスはスポーツであったらしい。それではいつからプロレスはスポーツでなくショーになったのか?その時点の契機を具体的に示せ。…と言うのが 渡部教授の公開質問の第1点。
なるほど、朝日はその頃からプロレス八百長説をしきりに煽っていた形跡がある。しかしそれは人気抜群のプロレス興行を握っている毎日が妬ましくて仕方がなかったからだ。
その証拠に朝日は力道山と柔道の木村政彦の一戦を仕掛けた。
プロレス八百長説を意識した両者、特に力道山が異常にエキサイトして試合はプロレスと言うより喧嘩になり、木村は完膚なきまでに叩きのめされた。あんな後味の悪い試合は後にも先にも見た事が無い。第1次プロレスブームは力道山の死を待つまでもなくあの時点で終わったと見るのが正しい。朝日の思惑通りに事は運んだわけだ。
そこで朝日に問いたい。プロレス全般には筋書きがあるとしても、あの力道山VS木村に限っては真剣勝負だった。では朝日はあの試合だけは例外的にスポーツとして認めるのか?これが質問の第2点。
ここで問題はようやく今回の猪木KO事件に戻る。まさかあの入院事件まで含めてショーだったとは、いかに朝日でも強弁できまい。それでは猪木が舌を出して失神したとたんに、ショーからスポーツになったのか?だとすれば何故スポーツ面で報道しなかったのか?
それともあれは、ショーの途中の単なる事故だったのだろうか?
それならば、たのきんトリオやシブがき隊の野球を観に行ったギャルが押しつぶされて怪我をしたのと同一レベルの出来事である。一般読者の関心の度合いは文句なしに猪木事件の方が高い。それなのに一方はデカデカと報道され、一方は完全に黙殺された。
一体ニュース価値の基準は何処にあるのか?
もし“犬が人を噛んでもニュースにはならないが、人が犬を噛んだらニュースになる”と言うテーゼが今でも正しいとすれば、女の子が押しつぶされて失神するのは当たり前過ぎてニュースにならず、猪木ほどの男がマジに失神して初めてニュースになるのが本当ではないのか? これが質問の第3点。

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 35年前の「プレイボーイ」より

この渡部教授の公開質問状に対して朝日新聞は、「ご意見として承っておくが、プロレスのスポーツ性についての考え方が全く違うので回答するつもりはない」と、木で鼻をくくったような返答。渡部教授は「私は意見を述べているのではない。質問しているのだ!」と抗議したが、朝日は遂にリングに上がろうとしなかった。

折角のプロレス論争もこれまでかと思われた時、奇妙な気配がまず兜町で起こった。
大日本インキを初めとするインキ株がジリジリと天井知らずに上がり始めたのである。
調べてみると朝日など3大紙がこぞって赤インキを買い占めていると言う。
それから一ヶ月、ある朝、朝日新聞の第一面に「アントニオ猪木、不死身の再起!ホーガンにリターンマッチ挑戦状!」の真っ赤な大文字が踊った…。

20年の月日が流れ、今や第4次プロレス・ブームの真っ只中、今日もNHK「報道特集」がプロレスの特集を放送し、番組内で老人ホームの一老人が楽しそうに語っていた。
「大新聞にプロレスの赤文字が踊った日、ああ、よく覚えていますよ。あれからじゃった、プロ野球からブーマーやスミス、大相撲からは千代の富士や朝潮がぞくぞくプロレスに転向したんじゃ。朝潮はビッグ・マスクという名前で覆面レスラーになったんじゃが、誰が見ても体型で正体がわかるんじゃよ(笑)。千代の富士と北天佑の弟の富士昇の因縁試合も凄かったな。最初は千代の富士が板で富士昇のケツをひっぱたいて優勢なんじゃが、観客から“北天佑!”って声がかかるとたちまち逆転するんじゃよ(笑)s。
しかし、スポーツがこうプロレス一色になるのもどうかな。わしは先日も朝日新聞に、スポーツ面でプロレスだけでなくプロ野球や相撲も扱ってくれと投書したんじゃが、待てど暮らせど返事がない。新聞というのは何を考えとるんじゃろ…」

         ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ニュース・パロディ」のタイトル通り後半部分は完全フィクションですが、今読んでも新聞の親方日の丸体質を皮肉った面白い読み物です。
朝日新聞に質問状を送った渡部昇一氏は上智大学の名誉教授で、昨年お亡くなりになっていますが(ご冥福をお祈りします)、「猪木自作自演説」を耳にした時の心境はいかなるものだったか(苦笑)。

しかし何度も書きますが猪木さんは少なくとも暫くの間は本当に失神してましたよ!
私は何度も繰り返し映像を見ましたが、仰向けにされて舌を出した猪木さんは担架が運ばれてくるまでの間、相当長い時間そのままの姿勢でした。

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 長時間舌を出したまま動けなかった猪木、何処をどう見ればこれが演技と言えるのやら…。
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 井上氏の著書、タイトルはズバリ!「猪木を信じよ」

ろくすっぽ映像すら見ていない人が推測の域を出ていない暴露本の影響で訳知り顔で語っているだけに思いますが、皆さん試しに舌を思いっきり出してみて下さい、30秒と我慢出来ませんから…。
かつては「猪木新聞」とまで呼ばれた「週刊ファイト」(廃刊)の編集長だった井上義啓氏(故人)も、「あの失神はマジだ!」と最後まで言い張っていました。
奇しくも井上さんは私と同じ7月20日生まれ(笑)、井上さん亡き今、私が意志を継いでアントニオ猪木の味方であり続けたいと思います。

さて、今宵は舌出し失神から35周年の夜、牛舌でも食べに行きますか…(笑)

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