今回はまず、石野誠一先生の著書「新社長へ!これだけは覚えておきなさい」(明日香出版社)に紹介されているエピソードを要約してお届けします。
連続して社内の営業目標達成割れが続いた頃、あまりの不甲斐なさに業を煮やした私はなかばやけくそ気味に営業目標を大幅に下げました。 と、目標は達成できました。社内は盛り上がり、私も心の底では(なにが達成か。この程度の目標で。)と思いつつも祝勝会を行いました。翌日、信頼する友江照幸先生(*)にファックスで「達成会で盛り上がりましたが、目標を落としての達成なので、心中複雑です。」と送ると返事が来ました。
「目標を落としての達成、心中複雑はよくわかります。しかし私は、よくやられたと思います。このような場合、最初の1,2回程度は会社が損をする心が大切です。目標達成の為にその前の目標を作って、それに達したらお祝いをしたり、ごほうびを出す。物事の成熟には「にじりよる」という手段も重要なのです。次に一段階上の目標を達成させて喜ばせる。この結果、社長が喜ぶ事が起きるのです。」
あまり発破ばかりかけていては、会社そのものが自己発破で空中分解しかねない事を学びました。「にじりよる」「まず会社が損をする」手法を体得しえた事は大きな収穫となっています。
何故この話を掲載させて頂いたかと言いますと、これと全く同じ事が当社で起こったのです! お恥ずかしい話ですが当社も永年、営業目標を達成できた試しがありませんでした。いつしか、目標とは届かなくても当たり前というムードが社内に蔓延して来たのです。私自身もそういう気持ちを持っていた事は否めません。
(これじゃあ駄目だ!)と、頭を打たれたのは、昨年2月に社内キャンペーンを実施した時です。(FILE No.005
「キャンペーン」参照)
キャンペーンをやるにあたっては当時も賛否両論ありましたが、目標数字とは何が何でも達成しなければならないという精神を改めて学びました。
今期がスタートする前、先生の著書に習って、各グループのリーダーには「必ず達成できる予算」を組んで提出するよう通達しました。「達成しなければならない」ではなく、「達成する」目標です。そしてどんな低い数字が出てきても、今回だけは黙って受け取ってやろうと覚悟を決めました。各人から出された数字を合算すると、全社で売り上げで前年比105%、粗利益で108%となりました。
(まあ、これならいいか。)と、しつこいぐらいにこれなら必ず達成するのかを念押しして今期に突入したのです。お取引先の皆様はご存じの方も多いと思いますが、当社の事業は本業とも言える包装資材と、別会社(株式会社エヌ・テイ企画)で賄っているチラシなどの印刷企画物に分かれています。この別会社の方は今期大苦戦で、目標に対して70%程度しか届かない有様でした。その為、包装資材の方は達成しても全体では未達に終わるかと思っていましたが、本体の方が頑張って、企画の不足分までカバーしてくれました。つまり、包装資材部門だけを見ると113%ぐらいで推移したのです。
当社は3月末決算ですが、それを待たず全社で売り上げ、粗利とも当確ランプがつきました。こんな事は10年以上振りの快挙です。(結局、全社では前年比売り上げで106%、粗利で112%ぐらいで終わりそうです。)
今期は有終の美を飾れましたが、慢心する事なく来期も望みます。そして、今回はあえて目線を落としましたが、少なくとも私の心の中では基準を落とす事なく、より高い壁を乗り越える精神を持ち続けるつもりです。
(*)友江照幸氏・・・経営コンサルタント、指導企業の中から、坪効率世界一のスーパーや、数多くの優良企業を排出。私の「経営の師匠」石野誠一先生の、これまた「経営の師匠」的存在の方。
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